女性の人材確保のために知っておきたい!女性特有の健康課題とそのサポート方法
この数年間で労働力人口における女性の割合は増えてきており、今後もこの傾向は続くと言われています。若年層が減少していることから人材確保が難しいと言われている現代において、女性労働者の役割は今後、ますます重要になっていくでしょう。そこで今回はそんな女性の人材確保のために企業が取り組むべき課題を女性特有の健康課題を軸に解説します。ぜひご覧ください。
目次
増加する働く女性の割合
企業がサポートすべき女性特有の健康課題
女性が働きやすい職場を作るための対策
女性特有の健康課題をしっかり理解して社内体制を整えましょう
増加する働く女性の割合
(出典:総務省「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)8月分結果」2021年10月) 参照
結婚・出産後も職を持つことに対する意識が高まる中、共働き夫婦が増加していることから、労働力人口の中で女性が占める割合は、この数年上昇し続けています。
少子化により若年層の労働力人口が減少している中、人材確保において女性の果たす役割はますます大きくなっていくことが予想されます。安定した人材確保のためには、女性にとって働きやすい職場の整備が不可欠でしょう。
企業がサポートすべき女性特有の健康課題
働く女性が増加する中、企業には女性特有の健康課題への理解が今まで以上に求められています。女性に多く見られる主な健康課題についてひとつずつ解説していきます。
月経と関連症状
女性にはおよそ月に1度の頻度で月経が訪れます。月経前や月経中は、腹痛や頭痛、腰痛、むくみ、のぼせなどの身体の不調から、抑うつ状態やイライラなどの精神的な不調まで、体調への影響がさまざまな形で現れることが多いのが特徴です。
症状がひどい場合には、子宮や卵巣の病気が潜んでいることもあり、ただの生理痛と放置し続けてしまうと重症化につながる恐れもあります。
妊娠・出産と関連症状
妊娠が分かる頃から始まる症状が「つわり」です。吐き気・気分の不調・腹部の張り・むくみなどが起こり、ちょっとした臭いや空腹で具合が悪くなることもあります。妊娠において避けては通れない症状なので、ストレスや不安を溜め込まないように過ごすことが大切です。
また、出産後はホルモンの分泌が減ることで、抑うつ状態や涙もろい状態に陥りやすくなります。慣れない育児も相まって、肉体的・精神的な疲労を感じやすい時期なので、周囲のサポートが不可欠です。
女性特有のがん
女性特有のがんには「乳がん」「子宮頸がん」「子宮体がん」「卵巣がん」などがあります。40代で罹患率のピークに達するものが多いですが、子宮頸がんは20代後半から一気に増加する病気なので、年齢で安心せず、定期的に検診することが大切です。特に、乳がんと子宮頸がんに関しては、国が2年に1度の検診を推奨しています。
更年期障害
更年期障害は、50歳あたりの閉経前後の女性に起こりやすい症状です。個人差はありますが、のぼせや発汗、動悸、頭痛などの身体的不調に加え、気分の落ち込みややる気が起きないなどの精神的な不調が現れやすくなります。仕事の効率が低下した際など、周囲の理解を得られないと離職につながりやすい症状なため、特に対応に注意が必要でしょう。
女性が働きやすい職場を作るための対策
女性特有の課題を理解したら、企業はその課題をサポートする社内体制を作ることが大切です。具体的にどのような対策を行うべきか、例を見ていきましょう。
生理休暇の整備
生理休暇は労働基準法(第68条)により定められた制度で、女性労働者であれば雇用形態に関わらず誰でも取得できます。有給か否かの判断や日数などは各企業に委ねられており、比較的自由度が高い制度です。しかし、厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、その取得率は全体の約1%にとどまっており、取りやすい環境の整備が重要になっています。
産休・育休制度の整備
出産に際して産前・産後に仕事を休むことができる「産休」、1歳未満の子どもを持つ夫婦が取得できる「育休」は、女性が出産や子育てをしながら働き続けるために不可欠な制度です。妊娠中の母子の健康を守るためにも、生まれた子どもを最適な環境で育てるためにも、社員がためらいなく取得できる必要があります。企業側は、取得しやすい環境整備のための周知はもちろん、産休・育休取得者が復帰しやすい業務体制を作ることが大切です。
社内カウンセラーの設置
社内カウンセラーは性別問わず社員のメンタルヘルスをケアする存在ですが、特に、月経や更年期などの影響で精神的な不調をきたしやすい女性の悩みをサポートするのに効果的です。不調を感じた際のカウンセリングはもちろん、メンタルヘルスに関する教育研修など、予防にも大きな役割を果たします。
婦人科検診やがん検診の推奨
女性特有の病気やがんを早期発見し適切な治療へと繋げるためには、定期的な検診が不可欠です。企業は、費用や時間などの懸念点を解消し、社員が検診を受けやすい環境を整えましょう。
勤務形態の柔軟化
病気や不調の治療や通院のための休暇が取りやすい環境を整えるのはもちろんのこと、月経前後の不調や子育てに伴う緊急事態に対応できるような柔軟な勤務形態を用意することは働く女性のサポートに繋がります。2017年度に経済産業省が発表した「健康寿命延伸産業創出推進事業 調査報告書」内の、働く女性が必要と感じたサポートの中で大きな割合を占めていることからも、大きな意味を持つ対策です。フレックスタイム制やテレワークなど、新たな働き方を柔軟に取り入れ、女性が働きやすい職場環境を整備しましょう。
(出典:「平成29年度健康寿命延伸産業創出推進事業 (健康経営普及推進・環境整備等事業) 調査報告書」2018年3月 参照
女性特有の健康課題をしっかり理解して社内体制を整えましょう
これからの人材確保のためには、女性が働きやすい職場環境の整備が必要不可欠です。まずは社員が女性特有の健康課題に直面した時に、柔軟に対応可能な就業規則を作ることがスタートラインになります。
女性特有の症状に対してしっかりとサポートを行うことで、離職率を下げられるだけでなく、新たな人材の確保にも繋がるはずです。
総合保険代理店であるGRITTERでは、人材確保のためのさまざまなサポートを行っています。提携する社会労務士をご紹介することも可能ですので、ぜひお気軽にお問合せください。
【監修者】
坪 義生(つぼ よしお)
じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。千葉大学大学院社会科学研究科修士課程修了(経済学)。大学在学中に社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士の各試験に合格。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。